「……え?」
……あれ? いま何された?
頰にちゅって触れたのはルノのくちびるで……待って、なんでわたしキスされたの?
「僕なら大丈夫だって、油断しましたよね」
にっこり。甘いプリンススマイル。
未だにぽかんとしているわたしの耳に、ルノがくちびるを寄せる。そして。
「"俺"だって男なんで」
「っ!?」
椛に負けないくらい甘い声が耳に流し込まれて、一瞬にして顔が赤く染まる。
この子いま……! 俺って言ったんですけど!
「な……っ、も、ばか……!」
「先輩が先に揶揄ったのが悪いんじゃないですか」
そうなんだけど……!と。
気づけば形勢逆転されて揶揄われていることにわなわなと震えていたら、「ルノ」と落ち着いた声で彼の名前を呼んだのはいつみ先輩で。
「……あんまり揶揄ってやるなよ」
どこか疲れたようにそう言った先輩に、ルノは「わかってます」と言ってすんなりわたしから離れた。
それにホッとしていたのもつかの間。思い出したようにこちらを見たいつみ先輩は。
「そういう格好するなら一番に俺んとこ来るようにしろよ。
……まあ俺のところに来た時点で離してやらねえだろうけど」
とんでもない爆弾を落とした。
おかげで心臓がフル稼働だし、顔は赤くなるし、気が休まらない。……でもいつみ先輩の言葉で嬉しくなるなんて本当にわたし、重症すぎだ。