「……ルノ、照れてる?」



すぐそばまで歩み寄って顔を覗くと、動揺したように泳ぐ目。

「照れてません」って言葉だけははっきりしてるけど、どうにも様子が怪しい。ほんとに?って疑いの色を濃くするわたしに、ルノは困ったように目尻を下げた。



「……だって」



「……だって?」



「……南々先輩がかわいいのが悪いんじゃないですか」



むっと不機嫌そうに視線を逸らすルノ。

その横顔はどう見たって照れていて、そんなルノの様子に思わずキュンとする。今日はやたらといろんな人にキュンとさせられてるけど。



こんな顔されて、真顔を保てるわけがない。




「だから、やっぱり照れてるんでしょ?」



「……悪いですか」



「ふふっ、ううん。全然悪くない」



かわいいって言ったら恨めしそうな目でわたしを見上げたルノは、「かわいいって言わないでください」と反論してくるけれど。

めずらしく顔が赤いから、かわいいとしか言えない。



「………」



そんなわたしをひたすらジト目で見ていたルノは、何を思ったのかふと席を立つ。

そのせいで今度はわたしが彼を見上げる形になって、どうしたのかと首をかしげていたら。



なぜか。……なぜか。

微かに腰をかがめた彼のくちびるが、頰に触れた。