わたしの表情を見かねたように、珠王先輩がそう教えてくれた。

……双子の弟? ルノくんの?



「部屋から出てこねえし、基本的にルノしか部屋に入れねえ。

だから、ああやってルノが飯持っていってる」



一応ロイヤル部のメンバーだぞ、って、彼は苦笑気味で言う。

これもおそらく、本来なら知っている事柄で。ロイヤル部のことを何も知らない生徒なんて、この学校にはわたしだけ。



「ほら、食わねえと冷めるぞ」



「あ、はい……いただきます」



だめだ、思考が追いつかない。

この5人だけでも知り得ないことがたくさん出てくるのに、まだもうひとりいるっていうのか。しかも部屋から出てこない、ルノくんの弟って。



わからないことが、多すぎる。




「あ、美味しい」



そんなぐるぐると回る感情を一瞬で塗り替えたのは、一口食べたグラタンの味。

素直にこぼれた言葉に、作ったらしい彼はふっと笑みを浮かべる。どうやらわたしの感想にご満悦みたいだ。



「姫ちゃんの食欲がどれくらいなのかわかんねえから、小鉢つけなかったけど。

さっきシフォンケーキ買ってきたから、食べれそうならそれルノに出してもらいな〜」



「え、わざわざ買ってきてくれたの?」



「買い出しのついでだよ〜」



そう言われても、お昼まで作ってもらって、ケーキまで買ってきてもらったなんておこがましさが半端ない。

……っていうかわたし、どうしてここにいるんだっけ。



「あの、」