名前を呼ばれて、顔を上げる。
本当なら返事しなきゃいけないんだろうけど、先に視線が絡んだせいで、声が喉の奥に散ってしまった。
「万が一何かされたら、言えよ」
「、」
「巻き込んだのは、俺らの方だ。
それぐらいの保証は、ちゃんとするから」
この人は、わかってる。
今日自分がわたしの元へ直接やってきたことで、周囲の女の子が、わたしにいい顔をしていないってこと。わかってて、言ってくれる。
「……ありがとう、ございます」
お礼を言えば、珠王先輩はふっと目を細めて。
それから伸びてきた手がわたしの頭を軽く撫でたかと思うと、すぐに離れていった。
「お待たせしました」
「おー、サンキュー」
丁寧な動作で、淹れた紅茶のカップを並べて置いてくれるルノくん。
カップを乗せていたトレーを置いてもどってくるのかと思いきや、次にキッチンから出てきた彼の手にはさっきのトレーと、グラタンとカップが乗っていた。
「……じゃあ、行ってきます」
「はいはい、いってらっしゃーい」
女王先輩がひらひらと手を振って見送る。
その様子をどうするわけでもなくじっと見ていたら、珠王先輩を除くメンバーは各々食事を開始していて。
「双子の弟んとこ、行ったんだよ」