リビングの奥にある、キッチン。
言われると気になって彼を追うように覗いてみたら、キッチンの壁につくられたパントリーには、所狭しと紅茶が並んでいた。
英語表記のものも多いし、いろんな国の紅茶が揃っているみたいだ。
……紅茶専門店でも開けそうな勢いね。
「はじめは数種類だったんですけど、紅茶は1箱に複数ティーバッグが入ってますから。
それを飲みきる前に数を増やしていたら、必然的にこういうことに」
電気ケトルのスイッチを入れた彼が、「グラタンに合うものにしますね」とパントリーを探る。
それを聞いてふとリビングのテーブルの上を見れば、わたしがお願いした通りに人数分のグラタンが置かれていた。……手作りなんだけど。
「ねえ、あのグラタン作ったのって……」
「ああ、椛先輩ですよ」
……え、意外だ。
あのオレンジベージュさん、料理できるのか。
「ねえねえ、夕姉さん。
なんだろ俺、いま姫ちゃんが思ったことすげえ読み取れたんだけど」
「椛、たぶん全員わかったと思うわよ」
「『意外』って顔に出てるからな」
「ルノ、早くしよーぜ。俺腹減ったんだけど」
リビングの面々から、自由に上がる言葉。
そんなに顔に出てたのかと思いながらも、「意外で」と言いつつ先ほどすすめられた席にもどる。
別になんでもいいんだけど、昨日と席が違う。
今日は珠王先輩の隣だ。……とても居づらい。
「南々瀬」