「姫〜。 ちょっと手伝って〜」



「はぁい」



椛に呼ばれて、席を立つ。

別荘の広いダイニング。テーブルには色取り取りの料理が並べられていて、それだけでもテンションが上がるというのに。



「わ、美味しそう」



薄く切って焼いたバゲットの上に、熱を与えて溶かしたラクレットチーズを器用に乗せている椛。

その見た目に頰をほころばせているわたしにくすりと笑った彼は、「適当に乗せてって」とその横に置かれた食材を指差す。



生ハムにトマトにサーモン、玉ねぎ、にサラダ系の野菜が複数。

バジルソースやホワイトソース、ドレッシングなんかも用意されていて、どうやらラクレットチーズの上にそれを乗せて欲しいらしい。



これが最後のメニューで、チーズがいい感じに溶けている間に出したいんだろう。

「残り半分は自分たちでトッピングできるように」とのことらしいから、たくさん置かれたそれの半分にだけ、材料を手際よく乗せていく。




「乗せたわよ」



「おっけ。なら出来上がり〜」



大きなお皿をわたしと椛でそれぞれひとつずつ、テーブルへと運ぶ。

並べられた豪華な料理を作り上げた椛にみんなで感心しつつ、席につく。



わたしの右隣はいつみ先輩で、その向こう側が夕帆先輩。

左隣はルアで、ルアの向かい側がルノ。わたしの向かいが椛で、その隣が莉央だ。



「いただきます」を告げて、それぞれ好きなものから料理を口にする。

どれもいつも以上に美味しくて、話題は唐突に莉央のことになった。



「言いたいことあるなら聞いてやるぞ」



そう言ったのは、いつみ先輩で。

生ハムとサーモンの乗ったバゲットを口に運んでいた莉央は、ちらりとわたしを見てから「ねーよ」と返した。