上がらない熱と、褪め切った感情。
……見据える南々瀬はやわらかく微笑んでいるはずなのに。
「今のあなたのこと、わたしは好きよ。
出会った時から嫌いだなんて、一度も思ってない」
「………」
「臙脂の髪が綺麗だってずっと思ってたの。
……罪悪感なんて考えてたら、誰も幸せになれないじゃない。だから莉央。あなたには、あなたのままでいて欲しいの」
……そうか。
俺が知ってるいつみの瞳は冷たく見えるだけで、その内側にはちゃんと優しさとぬくもりがあるけれど。
「それじゃあ、
あなたの望んだ答えにはならないかしら……?」
どうしようもなく冷めてるからだ。
南々瀬の瞳が。……未来なんて見えてないみたいに。
「いや。
……いつみがお前に話してこいってわざわざ言った理由が、なんとなくわかった」
「……そう?」
「……これでもお前のこと認めてんだよ」
手を伸ばして、髪をぐちゃぐちゃと乱す。
乱された張本人は顔をしかめて「何するの」って文句を言ってるけど、髪質の問題なのか、指先で何度か軽く梳いただけでもとに戻った。
「……そろそろ入るか。
準備手伝わねーと、夕帆あたりがうるさそうだからな」
「ふふっ、夕帆先輩なんだかんだ優しいわよ?」
たぶんもう、気づいてる。
ルアも、ルノも、夕帆も、椛も、もちろんいつみも。だからいつみは、俺に話せって言った。──この褪め切った瞳に、俺が気づくように。