……ツレないな。

つまらなくて「女だって思われてるうちに南々瀬ちゃんに迫っとこー」とぼやいてみれば、案の定睨まれた。……おいおい。



「いいでしょ?あたし、女だし」



「自分の胸に手を当てて考えることだな」



「あらそれってセクハラ?」



え?触らせてあげようか?ってニヤニヤ笑みを浮かべる俺を、舌打ちで一蹴するいつみ。

ノリのいい返事をされたらされたで、全力で拒むのは俺の方だけど。……こういうことやってるから、「実は王様と女王様はデキてる」って校内で噂されてんのか。



先に言っておく。それだけは絶対にない。

一部では俺が女装してんのも、デキてるからだって言われてるらしいし。……いや、無いだろ。



ああでも噂といえば、王様の恋愛対象が実は男で、ひそかにロイ部の面々を食ってるってのもあったな……

C棟から俺らが出ないのが悪いんだけど。南々瀬ちゃんのことで、噂が多少軽減されることを願うしかない。




「あたしといつみってデキてるらしいわよ」



「……勘違いも甚だしいな」



「ね。あたしもそう思う」



実にくだらない会話のキャッチボールを続けること、約10分。

無駄な時間だなとすっかり冷め切った紅茶に口をつけていたら、スマホに触れたいつみが送信されてきたメッセージを俺に見せた。相手は……ああ、ね。



「なに? あたしに行けって?」



「俺が行くと何かしら俺の身に不幸が起こる」



……そんな厄病神みたいな言い方するなよ。愛されてる証拠だろ。

とか言ったって、こいつの中じゃ俺が行くことが決定してるわけで。