別荘のあたりは八王子の敷地だかなんだかで、ビーチは完全に貸切状態。

夏場なのにこうも人のいないビーチに来ることなんてねーから、贅沢だ。



「じゃあ、今回は椛も気にせず楽しめるのね」



「お。おかえり南々ちゃん。

そういうこと〜。満喫して帰るつもりだよ〜」



砂浜から上がってきた南々瀬が、チェアに腰掛ける。

その機会をうかがっていたかのようにそろっと南々瀬に近づいたルアが、甘えるようにして膝枕してもらっていた。



「……ルノ。体調大丈夫か?」



「いつみ先輩……まあ、さっきよりはマシです」



それに対して誰も文句を言わないのは、ルアの猫っぽさからなのか。

まあ慣れたら人懐っこいだけで、ルアには椛みてーな下心とかないからな。あったら色々と変わってきたんだろうけど。




「そういえば昨日夕陽に「旅行行くのずるい」「俺も行きたい」って長々と電話で言われたんだけど、誰か旅行行くこと言ったの?」



「夕帆じゃないのか?」



「言ってないわよあたしは。

呉から伝わったんじゃないの?」



ようやくテラスへと出てくる気になったらしく、ぐーっと伸びをしながら近づいてくる夕帆。

南々瀬の膝の上で丸くなっているルアを視界に入れると、「仲良しね」と笑った。



「っていうかアイツ、

暇さえあれば南々瀬ちゃんと電話してない?」



「休憩時間とかに掛けてきてるみたいですよ。

この間ライブの日は、終わってからわざわざ連絡してきましたし。楽しそうに話してました」



「……南々瀬ちゃん、

完全に彼女扱いされてるわよそれ」