……おお。今日はブラックだな。

まあ今車移動に疲れきって広いテラスのロングチェアにぐったり寝そべってるルノは、南々瀬のそばに行けなくてひたすら機嫌が悪い。



「俺いま無敵だし〜?

"南々ちゃん"が似合うって褒めてくれたからねえ」



「死んでください」



「おま、それそんな笑顔で言うことじゃねーだろ……

たまに夕帆みたいになるよなお前は」



とんでもないブラックを発揮するルノを、「そんなこといっちゃだめだよ?」となだめているルア。

普段は常識のあるルノがこうなると、ルアしか止めらんねーからな。……まあ常識人ぶってるだけでルノはそこまでまともじゃない。



常識人だったらあいつにキスしろって迫らないだろ。

しかも何が怖いかって、冗談には見えないところだ。……本気なのは知ってるけどな。



「あたしみたいって何よ莉央」と、背後から声が飛んでくる。

振り返れば、テラスと部屋をつなぐデカい窓を開け放った状態で、雑誌片手にこっちを見る夕帆。焼けたくねーとかで、外に出てこない。女子か。




「そのままだろ」



「あんたも昔っから相当失礼なガキね」



「お前の弟ほどじゃねーっての」



別荘の1階客室は3部屋ある。

すべてからテラスに出られるようになっているからテラスは広いし、階段をおりれば砂浜だ。来ておいてなんだけど、1泊しかねー上に疲れるから海には入らない。



それでも海に来た気分は味わいたいらしい南々瀬が、いつみと砂浜を散歩してるけど。

……遠目に見ても、絵になる並びではあるな。



「椛、割と急だったのによく外泊大丈夫だったな」



「ん〜。今日は母さんで、明日は青海さんが仕事休んでくれるらしいからねえ。

大丈夫だとは思うけど、呉ひとりに双子任せんのはやっぱり心配だしな〜」