テラスから見えるのは、真っ青な海。

すぐそばの道路には、南国を匂わせるヤシの木のような植物が植えられていて。



「……良いよねえ」



いつも以上に色気を放つ椛がおそらくサングラスに隠した瞳で見据えているのは、

ショートパンツにシースルーの白シャツを合わせた涼しげな格好の南々瀬。



「シースルーのアンダーに着てるキャミのさ。

見せてるのに、なんか見ちゃいけないもの見てる気にさせられるあの透け感がたまんない。しかもパステルイエロー。夏最高かな」



「……お前って下心ブレねーな」



「健全な男子コーコーセーなんで」



ふっと笑った椛が、「ね?るーちゃん」と話題を唐突にルノに投げる。

乗り物があまり好きじゃないルノは長時間の車移動で疲れたようで、「変なことに巻き込まないでください」と面倒そうな物言い。




──8月も下旬に差し掛かり、無事に業務も課題も終了。

俺らは八王子家が所有している別荘にいた。



……というのも。数日前、課題を持ち寄ってC棟のリビングに集まるのも、課題に比例してそろそろ終わるな、という話をしていたとき。

できあがった生徒会のみのパンフを持ってきたいくみさんの発言がはじまりだった。



「八王子の別荘に、1泊2日の旅行に行ってらっしゃい。

ちなみにもう既に姫ちゃんのご両親には了承を頂いてあるわ」



どうやらパンフの撮影のご褒美旅行らしい。

いつみが撮影に途文句を言わなかったのは、「撮影がんばったら南々瀬ちゃんと旅行行けるわよ?」という確信犯な囁きに乗せられたからだった。



ちなみに、本当に南々瀬の特集が20Pにわたって掲載されていて。

「もう二度とやりたくない」と嘆いていた南々瀬。



でもうつってる写真はどれもいい表情だったし、あとで夕陽から送られてきた休憩時間のあのツーショットは結構気に入ってるみたいだった。

……そのツーショットに拗ねてる男が数人いたけど。



「っていうかなんなんですかそのサングラス。

夏休み満喫しまくってます感醸し出されててなんか無性にむかつくんですけど」