「へえ。
このあいだの写真は笑顔だったのにねえ」
「……あんたのそれは盗撮だからよ」
インタビューの方も休憩らしく、もどってきた椛は「あ、バレた?」なんて悪びれもなく笑ってる。
実は盗撮された写真の方が笑顔だったりするのって、たぶん写真嫌いなヤツあるあるだよな。
「……でも本当に嫌そうね」
ちらっと視線を向ければ、やっぱりまだ表情が堅いようで。
あれ慣れんのか、と俺らが見ていることに気付いたらしい。眉根を寄せた南々瀬は、夕陽に何やら言っているし。首を横に振っているけど。
「……、変わったな」
それに対して、夕陽が耳元で何かを囁く。
それから二言ほど交わしたかと思うと、さっきまでの表情が嘘だったかのように、南々瀬がふわりと笑みを浮かべた。
「……なに言ったのかしらね」
「口説いたんじゃねえの?」
「でも南々瀬ちゃん、口説かれたら顔赤くするじゃない?
あんなにうれしそうな顔するってことは、何かそれなりに嬉しいことがあると思うんだけど」
カメラを向けられても、すっかり自然な笑みを浮かべている南々瀬。
それに気を取られていたが、さすがは人気アイドル。夕陽も、いつもの毒づきはどこへやら、完璧なアイドルスマイル全開で。
「夕陽、うれしそうね」
「……あ、いくみさん。戻ってきたんですか?」
「うん、仕事ひとつ片付けてきたの。
……ふふ。夕陽にあんな顔させられるの、南々瀬ちゃんだけじゃない?」



