◆ Side莉央



パシャッ、と鳴るシャッター音。

本格的なスタジオ施設が整うここは、ドームの横に立つE棟。主に芸能科の生徒が出入りするこの棟に、なぜか。



「……なんか表情堅くない?

そんなんじゃ見た人喜ばないんだけどー」



「あんたは黙ってなさい」



「……呼んどいて横暴だよね」



モニターの前に置かれた席を、監督よろしく陣取る夕陽と、端の方で壁に背を預けて困ったような顔をしてる呉羽の姿がある。

学校見学に来たらしいけど、なんでも「パンフレット用の撮影のお手伝い」も兼ねてるらしい。……なんだそれ。



「来年度のパンフ、生徒会だけのパンフで、しかも"姫推し"らしいじゃん。

20P特集組むとか言ってたのに、このままじゃナナの撮影めちゃくちゃ遅くなるんだけどー」



「ちょっと待って何それ聞いてない……!」




慌てて南々瀬が声を上げているが、「でもいくみさん言ってたし」と一言で躱す夕陽。

生徒会だけのパンフを作る意味もわかんねえし、姫推しってなんだよ。あと特集ってなんだよ。どこぞの雑誌じゃねーんだから。



「っていうかあいつ普段撮られる側じゃねーの?

なんで堂々と監督みたいに座って指示してんだよ」



「……まあ、撮られる側なので色々とポーズだとか、見る側の欲しい魅力は引き出せるでしょうけど。

問題は、それが学校のパンフに役立つか、ですね」



「夕ちゃん、レディース雑誌のメンズ記事にたくさんでてるもんね。

このあいだは『理想の彼氏15選』の記事で、人気俳優に並んでえらばれてたよ……?」



……あきらかに学校と方針が違うだろそれ。

っていうか、もう既にこの学校の生徒会推しが度を超えてる。隣のスタジオではいつみが面倒なインタビューに答えてる頃だろう。



「しかもあいつ今日撮られる側じゃないんだと〜。

まあ……うちの生徒じゃないもんねえ」



「来年の1年がパンフに載るわけにはいかねーからな」