「椛先輩以外の皆さんは、昨日も家に来られたんですよ。

そのときに飾り付けしました」



「呉と、瑠璃と、翡翠には。

さっき椛がみんなのところからいなくなったときに、はなしたんだよ。ね?」



「うん。兄ちゃんへのサプライズだからって。

俺も実際に見たのはいまがはじめてだけど、思ってたより豪華だね」



去年も生徒会にいた俺は、確かに夏休み業務のときに祝ってもらったけど。

今年は業務日と被ってなかったし、そもそも俺は自分の誕生日すら忘れていた。いまだに困惑が勝つけれど、目が合った先で姫が微笑む。



「お誕生日おめでとう、椛。

お昼、メニューはルノが椛の好きなものばっかりお願いして用意してもらったみたいよ」



「ちょっ……

なんで言うんですか、南々先輩……」



むすっと拗ねたように姫を見るルノ。

テーブルの上には確かに俺の好きなものばかり並んでいて、ルノを見れば視線を逸らしてしまう。……どうやら本当らしい。




ごめんな、反抗期とか言って。

るーちゃんまだかわいい後輩だったわ。



とりあえず、と部屋に足を踏み入れて、まだ現実に浸れないまま席につく。

「にぃにおめでとー」と笑顔を瑠璃に向けられて、「ありがと」と返したところでようやくじわじわと染みていくような感覚。



口々に「おめでとう」をくれるから、自然と笑みが浮かぶ。

俺の好きな食べ物ばかり用意されていて、そのあと出されたケーキには17本のろうそく。用意されていたケーキが普通の丸いホールじゃなくて大きな長方形のもので、さすが八王子と苦笑したのは言うまでもない。



「はいこれ、みんなからのプレゼント。

本当はいかがわしいものにしようかと思ったんだけど、今回は南々瀬ちゃんもいたから普通にプレゼントね」



「姫がいなくても普通のにしろよ。

……あ〜も、でも、うれしい。さんきゅ」



渡されたショップの紙袋の中には、おしゃれなシャツと箱に入った細いチェーンのネックレス。

「恋人じゃないのにネックレスってどうかと思ったんだけど、椛に似合うと思ったから」なんて姫に言われたら喜んでつける。



「じゃあるりはほっぺにちゅーしてあげるね」と、可愛すぎる妹からのプレゼントももらって。

過ごした時間が、あまりにも幸せだったからだろうか。