好きに使っていいらしいから、ドライヤーで髪を乾かして部屋を出た。
てっきり俺らが最後かと思っていたけど、待ち合わせした場所に姫の姿はまだない。女の子はやっぱり時間かかるよな。
「翡翠、ちゃんと呉ちゃんの言うこと聞いた?」
「きいたよ?」
「ん、えらいな。
呉、翡翠の面倒見てくれてさんきゅ」
よしよしと弟たちの頭を撫でていたら、なぜか姉さんからじっと見られていることに気づいて。
「なに?」と聞けば、「よくできるお兄ちゃんなのにそれ以外が残念」と一言。それ以外の範囲が広すぎねえかな。
「お待たせしてごめんなさい。
ドライヤーで髪乾かしてたら遅くなっちゃって」
くだらない話をしていれば、駆け寄ってきた彼女。
ホワイトベースのシャツワンピが夏らしくて、大人っぽいのに彼女が着ると嫌味がない。
「それじゃあ行くか」
いっちゃんのそのセリフでぞろぞろと動き出すと、広間に向かう。
「プール入ったらおなかすいたね」「そうね」って言葉を交わしてるルアと姫の間に流れる空気が平和だ。ルアは部屋から出てこなかっただけで元々身体動かすの好きなんだよねえ。
「あたし、
昼食済ませた後はのんびりしたいんだけど」
「……夕さんずっと休んでたじゃないですか」
そんな話をしながら、何気なく開いた広間の扉。
ぴたっと動きを止めた俺。その不自然な動きで後ろが詰まるけど、誰も文句は言わない。というか、みんなニヤニヤしてる。
「え……いつのまに……?」
驚きで聞きたかったのと違う言葉がこぼれるけど、頭の中が一瞬でまっしろになるぐらいには困惑してる。
広間の中はホログラムのバルーンが飛ばしてあって、『HAPPY BIRTHDAY IROHA』の文字。それは正真正銘俺の名前で、今日自分が誕生日だったことを思い出した。



