尋ねたらどこか照れくさそうに視線をそらす彼女。どうやら本当らしいけど、そんな顔して俺のことどうしたいんだろうと思う。可愛すぎじゃねえの。
さらに触れたい衝動が押し寄せるから思わず髪をそっと離すと、彼女はふるふると首を横に振った。
「何もないなら、いいの。
何かしちゃったかなって思っただけだから……」
「んーん、姫は何もしてねえよ~」
あからさまに、ホッとしてくれるから。
俺に嫌われたと思った?って悪戯な表情をつくって彼女を覗き込めば、こくんと頷くおひめさま。……可愛すぎる。ハマるなって方が無理。
「椛先輩。
瑠璃が向こうで寂しそうな顔してますよ」
変わる表情をひたすらに眺めていたい。
だけど現実に引き戻されて、「るーちゃん」とその名前を呼べば、ルノはどことなく不満そうに姫の手を取った。
……ルノがここまで牽制するなんて、めずらしい。
本気だってことは言われなくてもわかってるけど、よりによって俺らがライバルなんて笑えるだろ。
「南々先輩。
こんなところでジッとしてるから冷えてるじゃないですか。風邪引かないでくださいよ?」
「……どうしてわたしの手をにぎってるの、ルノ」
「椛先輩の元から攫おうと思いまして」
それじゃ、って。
嫌味のように俺に一瞬だけ視線を流したルノは、本当に姫を連れて呉羽たちのいる方へ歩いていくと、肩にタオルをかけてやっていた。
ほんっっとに可愛くねえな……
反抗期かよ。むかつく。最近るーちゃんちょっと俺に反抗しすぎじゃねえの。
「なんだかんだ言いながらも、
いつも通りに話してたじゃねーかよ」
肩に腕を乗せられて、「まあねえ」と莉央を振り返る。
あとで『高校生』『反抗期』『対策』で検索しよう。るーちゃんの反抗期は手に負えねえよもう。



