もう本当はある程度わかってた。
認めれば底なしに求めてしまいそうで、それこそが俺の怖かったもの。ちらりとタオルから顔を上げて、莉央を見上げる。
「……どんな顔して姫と会えばいいと思う?」
「いや、普通にしてろよ」
「姫が転校してきて間もない頃、
姫に迫ってた自分のこと思い出していま死にたくなってる」
壁際に追い詰めて『よそ見禁止』とか言ってたの、マジでいまなら恥ずかしすぎて地に埋まりたい。
よそ見禁止ってなんだよむしろ俺が視線合わせられねえっての。
「迫ってた?」
「そ~……ああ、あの時莉央はまだ起きてなくていなかったのか。
姫に『名前で呼んで』って迫ったことあって、」
あの時は単に悪ノリで絡んでたのに。
まさか本気で好きになるとは……っていうか『好きになるかも』宣言の時点で相当危うかったしな。
「ならその時みたいに迫ればいいんじゃね?」
「無理に決まってるじゃねえの……っ。
口説く前に俺の心が折れるわ……!」
本当に、真顔で姫を口説いてたいっちゃんを尊敬する。
普通好きな女相手にあんな平然としてられる?っていうかあのふたりさっきキスしようとしてなかった?
あれはいっちゃんが一方的にしようと思ってたのか。
それとも同意の上で……、いや、同意の上ってなんだよ。それならはじめから付き合ってるな。
「そろそろ戻らね?
あいつお前にわざとらしく視線そらされたってショック受けてたぞ」
「え、まじ?」



