ぷらぷらと。

手首を回していた莉央の言葉に、思わず眉間を寄せる。濡れて張り付くオレンジベージュの髪を掻き上げた先で、莉央が遠くを見ながら口を開いた。



「いつみも、ルノも。

ルアは……あれは恋愛感情じゃねーけど、あいつもあいつなりに南々瀬に近づこうとしてるだろ」



「………」



「夕帆は、はじめっから南々瀬のこと好いてた。

……俺もあいつのこと悪いヤツだと思ってねーけど、このままだと俺らがお互いに自滅する」



「……だから俺に身を引けって?」



ハッ、と。乾いた笑みが漏れる。

それを耳にして今度眉間を寄せたのは莉央の方で、何を言うのかと思えば「お前不機嫌顔に出すぎ」と一言。



言われて自分の表情を意識すれば、たしかに機嫌が良くはない。

こう見えて俺は意外と頑固なのだ。




「そんな顔して、なにが"好きになるかも"とか言ってんだよ。

あきらかにお前あいつのこと好きだろーが」



「………」



「身を引くのが嫌なぐらい、好きだろ」



「……莉央に恋愛面で叱られることなんか一生ないと思ってたのにねえ」



ふう、とため息をつく。

それからタオルに顔をうずめれば、脳裏にまた浮かぶ彼女の赤い顔。……独り占め、したい。



「好きだよ。

……夕陽が堂々と姫のくちびる奪ったとき、俺は結構イライラしてた」



くぐもった声に「だろーな」と短い莉央の声。

割と幼い頃から知ってる夕陽が姫の元カレだったのも、未だにクソガキって言われてるくせに夕陽が余裕ぶった大人になってたのも、ただただむかついた。