【完】こちら王宮学園ロイヤル部




そう言ったら、ふたりそろって苦笑する。

なんというか失礼な表情を向けられている気がしなくもないけど。



「南々瀬ちゃんって、あいつに対してめちゃくちゃドライよね。

もしかして本当は嫌いなの?」



「嫌いじゃないですよ。

可愛げがないことばっかり言うので、自然とわたしもそういう口調になるだけです」



あと、言わないけれど。

付き合っていた時は突き放せばシュンとしていたし、素直に「かまって?」って言ってくるところが可愛かったのだ。どうやら別れてその可愛げもなくなったみたいだけど。



「そもそも、あいつとどこで出会ったんだ?」



「地元の図書館です。

あの頃はまだ芸能人としてテレビには出てませんでしたけど、それでも顔がいいと女の子たちに普段騒がれるからって、静かな場所が好きだったみたいで」



今はもう行くこともほとんどないけど、昔はよく図書館が好きで通っていて。

本を読んでいたわたしに、「その本おもしろい?」って聞いてきたのが夕陽だった。図書館は静かだから来るだけで、彼は活字が好きじゃないらしく。




「……昔はもっと素直だったんですけどね」



読み終えた本の内容を、甘えるように寄り添ってくる夕陽に話すのが習慣で。

テスト前に図書館で大和とみさとと一緒に勉強してたら、「ナナちゃん」って必ずわたしのところに寄ってきて、みさとが忠犬ってあだ名をつけてたぐらいなのに。



「あいつがわがまま言ってるのは、

なんだかんだ甘えてる証拠だけどな」



「そうですね」



付き合うようになってからは図書館以外の場所でも会うようになったけど、彼は何かとわたしに甘えてきていた。

一緒にいる時間はくっついてるのが好きで、さみしくなってきたら「キスしていい?」って首をかしげて聞いてくる。



「俺のこと利用していいよ」なんて言われて付き合ったから、そんな風に甘えてくるのが可愛くてたまらなかった。

当時わたしも中学生だったし、まさか2つも年下の男の子と付き合うとは思ってなかったけど、なんだかんだ好きだった気がする。



……まあ、本命は大和だったんだけど。