【完】こちら王宮学園ロイヤル部








照りつける太陽と、きらきらと輝く水面。

青と白のマリンカラーを用いたパラソルの白い部分に八王子のロゴが入れられていて、どこかの高級ホテルみたいだ。



「……日本ってこと忘れそうですねこの景色」



なぜ。なぜ自宅のプールにバーカウンターなるものが設置されているのか。

いや、元を正せばなぜ自宅にプールがあるのか。



理由はもちろんここが八王子の豪邸だからで、プールの目下には綺麗に手入れされた庭が延々と広がる。おかげで、ここが日本ってことを忘れそうになる。

浮き輪に体重を預けたルアが、さらに小さな浮き輪に身体を通した瑠璃ちゃんと翡翠くんのことを見ていて、その光景に思わず和んだ。



本日、夏休みに入って1週間とすこし。

大量の夏休みの仕事がすこし落ち着いたからという理由で、「うちのプールで遊びませんか?」というルノのお誘いにみんなで乗った。



「本当は遠出したかったみたいよ、ホテルのスイート貸切とかの待遇するつもりだったみたい。

でも瑠璃と翡翠がいるから、椛が行けないでしょ?」



「……最近のルノって、

しれっととんでもないこと言いますよね」




スイート貸切って。いや、できるんだろうけど。

パラソル付きのビーチチェアで美脚を伸ばしてフルーツジュースを飲んでいるのは夕帆先輩で、サングラスをかけているせいでその見た目は完全にハリウッド女優だ。



いつみ先輩との会話を聞いている感じだと、どうやらいくみさんと付き合うことにはなったらしい。……が、今日もとても美人である。

相変わらず長い金髪を風に遊ばせているし、彼がパラソルの下にいるのは「焼けたくないから」らしい。女子力高いですね。



「まあ生まれながらの御曹司だもの。常識人だけど、たまーに御曹司感出ちゃうわよね。

それより南々瀬ちゃん、プール入らないの?」



「……せっかく冷たいジュース用意してもらったので、これ飲み終えたら入ります。

夕帆先輩、女装やめるって言ってませんでした?」



「それがねえ……いくみに嫌だって言われたの。

『散々女の格好してたくせに今更男の格好で迫られたらドキドキするからやめて!無理!あと夕帆のかっこよさに気づく女の子が出てきたら困るでしょ!?とりあえず卒業するまでは女装してて!!』らしいわ」



「……ノロケごちそうさまです」



そういえば夕帆先輩って、『女王』はあくまで裏に回る名前だから、いくみさんと付き合えないって言ってたけど。

それはどうなったんだろうかというわたしの視線に気づいた彼女は、ふっと笑みを浮かべた。