ふたりで並んで帰る途中。

いつみ先輩の唐突な問いかけに「え?」と聞き返すと、彼は「俺のこと」と端的に答える。



「まあ、14年?近く前の話だからな。

覚えてるっていうのも無理あるだろうけど」



「ああ……」



「でもあいつはたぶん間違いないって判断した」



「昔から、好きなんです。薔薇の花」



脆い架け橋。いつみ先輩もわたしも明確に覚えていない以上、それが本当にわたしたちだったのかを確かめる術はない。

だけどわたしが幼い頃から好きな花は薔薇で、相反する青い薔薇の花言葉をわたしは知ってる。



彼らが4歳のときにわたしは3歳だから、その意味を理解できていたのかは知らないけれど。

でもなんとなく、間違いない気がする。




「お前の親、研究者だったな。

それを考えると、医者と同じパーティーに招待されている、という可能性は考えられなくはない」



「そうですね。

わたしの両親、バイオテクノロジーの研究者なので。医療関係にも顔は広いと思います」



「……バイオ?」



ぴた、と。先輩が足を止める。

いきなりだったからそれに対応できずに、一歩足を進めたところで先輩を振り返った。



「……どうかしました?」



「……いや。なんでもねえよ」



……なんでもないって言う割には、納得していなさそうな顔だけど。

まあ気にすることでもないかと、何事もなかったかのように歩き始めた彼の隣に並ぶ。いつみ先輩が家まで送ってくれるなんて、女の子たちが知ったら目の敵にされること間違いなしだ。