慌てるわたしを楽しんで見てる椛と夕帆先輩。

そして呑気に話している莉央とルノ、困ったように苦笑しているルアと呉羽くん。……お願いだから誰かひとりぐらい助けてください。



もういっそここに夕陽がいてくれればよかったのに……と。

不誠実なことを考えていたら、いつの間にかすぐそばにいたいつみ先輩に頭を撫でられた。



「……冗談だよ。

お前が嫌がるようなことはしねえから、安心しろ」



「……は、あ」



「まあ油断できないぐらい口説くけどな」



「安心できる要素ありませんよね……!?」



どの口が「安心しろ」とか言ってるんですか。

びっくりするほど不安なんですけど。いや、別にいつみ先輩のことがきらいとかそういう訳ではないし、好いてもらえるのは嬉しいけれども。




「……っていうかもう付き合っちゃえばいいじゃない。

いつみの彼女なんてそう簡単になれる訳じゃないんだから」



「夕帆先輩も呑気ですね!?」



「付き合うか?南々瀬」



「今日いつみ先輩どこかにネジ置いてきました?」



なんで今日この人こんなに絶好調なんだろう。

そもそも今日がまだ終業式を終えたばかりで夏休みに入る前日、というのが既に不安すぎる。わたし明日から平然とやっていける自信がない。



……付き合うとか、付き合わないとかじゃなくて。

理事長によれば、一連の計画は冬で終わる。それなら、わたしはもうその時期にここを離れないといけないわけで。



彼氏、なんて存在をつくるのは以ての外。

思い出作りと言えば楽しいのかもしれないけれど、誰かの感情を大きく左右するようなことはしたくない。別れるの前提で付き合うわけにもいかないし。