【完】こちら王宮学園ロイヤル部




好きな、食べ物……は。

いろいろある。色々あるけれど。



「グラタン……?」



「わかった。昼飯に用意しといてやる。

昼休み、ちゃんとC棟まで来いよ?」



「あんたソレ、餌付けって言うのよ」



はあ、とため息をついている女王先輩。

どうやらわたしは珠王先輩に昼食に誘われていたらしい。というかわたしが今日お弁当を持っていたらどうするつもりだったんだろう。



……いや、購買か学食に寄るつもりだったからいいんだけど。

学校の規模同様、学食も品揃えが豊富らしいし。



なぜかお昼を一緒に食べる奇妙な展開になってるな、と思いつつ。

数日考えさせて欲しいと言った手前、何も知らないわけにはいられないから、と、結局は素直にうなずいた。




「じゃあ昼休みな」と。

念を押すように言った彼が、女王先輩と生徒たちの熱気を引き連れて帰っていく。



彼が去った後の教室は、さっきの騒がしさはどこへやら、とても静かで。

手に持ったままだったカードをじっと見てから、ひとまず財布の中へと入れた。



「南々瀬……入部させられちゃったの?」



珠王先輩が来てすぐにわたしから離れていたみさとが、困惑した顔でわたしを見つめた。

大和も大和で、「お前……」ってあきれた顔をしているし。



「まだ仮入部で、猶予をもらってるんだけど……」



「ふふ、そっかぁ。

でも。……南々瀬が入りたいって思うなら、そうするべきだとおもうよ」



ほっとするような笑みを浮かべて、そう言ってくれるみさと。

わたしが入りたいと思うなら、と。彼女がくれたその言葉を心の中で反芻して、小さくうなずいた。