何を言ってるんだ、と真剣に思った。

だがしかしいつみは至極真剣で、何がいたのかを問えば「女の子」。しかもその子はひとりでぼんやりと月を眺めていたらしく。



「……みちゃいけないものみたんじゃ」



「ちゃんと人間だったぞ」



「ユーレイも一応はにんげんだろ!」



そんなくだらないやり取りをしながら、ふと違和感に気づく。

そういえばいつみは、昔から絶対に自分で女の子の話をしない。俺が聞けば答えてくれるけど、絶対に自分から女の子の話をしないいつみが、女の子の話をした。



「……もしかして、いつみ、」



いつみがこの日、出会った女の子とどんな話をしたのかは、俺も知らない。

だけど、いくつか教えてくれたことがある。




「姫、って呼ばれてる女の子。

でもそれは、名前じゃないらしい、ってことと」



「、」



「薔薇の花が好きってことと、」



「薔薇の花……」



「青い薔薇の花言葉は『夢かなう』と『不可能』。

だから、相反するものだってことと、」



あともうひとつ。

これがロイヤル部と、姫探しのはじまりだ。



「──いつみの、初恋の女の子ってこと」