【完】こちら王宮学園ロイヤル部




からりとキャスター付きの椅子をこちらに向けて振り返るいつみ。

その姿は幼なじみの俺が何度見てもなれない"同い年"の姿で、なんでこいつこんなに顔が整ってんだろうと度々思う。



「……相変わらずのブラコン」



「そこかよ」



「……ほかになに言えって?」



いつみに俺の気持ちがバレていないとは思ってない。

むしろこうやって「彼氏」の話を教えてくれんのも、俺がいくみのことを好きだから教えてくれているんだとわかってる。



「……いいのか? 別の男に取られて」



……いいもなにも、俺5つも年下だし。

大人になれば5つなんて年の差も気にならなくなるのかもしれないけど、小学生と高校生っていう関係性じゃ、さすがに振り幅が大きすぎる。




「いくみ姉がしあわせなら、それでもいいんじゃねーの?」



そんな大人びて余裕ぶった言葉を吐いたけど。

本当は良いなんて思わない。思えるわけない。



それでも、どっかで「すぐ別れんじゃねーかな」って思ってたこともあるし。

事実いくみ姉は少々男勝りなところがあるせいで、結局すぐにフラれることが多かった。



「……男見る目ねーな」



「ちょっと……そういうこと言わないでよ。

自覚してるけど夕帆に言われたら結構傷つく」



いくみ姉の男運の悪さは本当に折り紙付きで、それでもだいすきないつみの前ではいつまでたってもお姉ちゃんでいたがるいくみを慰めるのは俺の役目だった。

いまなら、それはただいつみが俺といくみをふたりきりにするためにその状況を避けていただけだと分かるけど。



いくみが軽く2桁目の彼氏にフラれたときも、俺が小学生から中学生になっても、それは変わらなくて。

常にゆるやかだった波が突如大きく傾いたのは、俺が中学3年生になったときだった。