どこから出したんですか?って思うくらいに、低い女王先輩の声。
それにも動じず、ふっと口角を上げた珠王先輩は。
「噂は、あくまで噂だからな。
俺が動けば、さすがに"噂"とは言い切れなくなる」
「あんたまさか、」
「コイツを部員にする、って証明だ」
そう言って、今度彼がブレザーのポケットから取り出したのは、1枚の白いカード。
『PASS』の文字の下にわたしの名前が入っていて、右下には昨日見た入部届に押されていたものと同じ『王宮学園ロイヤル部』の押し印。
「これ、持っとけ。
C棟のセキュリティシステムにかざせば、いつでも中に入れる」
つまりはあの棟の、鍵。
黄色い悲鳴をあげていた女の子たちが、たぶん、喉から手が出るほど欲しいもの。
「C棟に入れんのは、そのカード持ってるヤツと、理事長のカードと、あとは稀に貸し出すゲストパスだけだからな。
それ、絶対落とすなよ」
「っ、」
そ、んな責任重大なこと言われても……!
さすがに「いらないです」とは言えずに受け取ったのに、思わず返しそうになっちゃったじゃないか……!
「ああ、そうだ」
まだ何か……!?と。
彼を見れば、珠王先輩は優しげに目を細める。そしてその口から、出た言葉といえば。
「好きな食いもんは?」
まさかの。まさかの普通の質問……!
脈絡のなさとある意味予想外なそれに、思わず「へ!?」と素っ頓狂な声をあげるわたし。



