「……好きにすれば良い。
俺はお前に女装を強要した覚えはねえぞ」
「女装を強要って……言い方やべえよ」
俺の好きな人は、今も俺の釣り合える相手じゃない。
八王子が八王子なら、珠王も珠王だ。
「……いい加減に、"姫探し"がなんだったのかも、南々瀬ちゃんに言わなきゃなんねえだろ」
俺ら子どもには逆らうことのできない巨大な城。
八王子は幅広い業界に名を轟かせる企業として有名だが、珠王はいま最新技術を駆使して世界にまで医療を届ける、世界最高峰の医療グループとして名を広げている。
「……ちょうどいい機会だ。
南々瀬ちゃんに確かめることもできるし」
「……ああ。
ただし、余計な詮索はしてやるなよ」
いつみからのお許しをもらって、「わかってる」と返す。
ルアも彼女が安全かどうかはわからないと言った。そんな状況で、このまま曖昧な関係性をだらだらと続けていくわけにもいかない。
「南々瀬ちゃん。
お昼食べ終わったら、ちょっと話さない?」
「え? あ、はい。いいですよ」
「ふふっ、それじゃあ早くお昼済ませちゃいましょう。
長く無駄話しすぎたせいで、ちょっと遅くなっちゃったけど」
彼女に打ち明けて、それらをすべて知った上で彼女がどういう結論を出すか。
もし彼女が俺らと相反する組織の人間だった場合は、姫探しの話でなんらかの違和感を感じるだろうし。
「……結構壮大な賭けだな」
椛たちにはまだ、言わなくていい。
一番良い答えにたどり着いたとしたら、それは俺が女装をやめるという決断を出すときだ。



