【完】こちら王宮学園ロイヤル部




いつみが仲介に入ったところで、夕陽は態度を改めるようなヤツじゃない。

むしろいつみにまで喧嘩を売りにいくタイプだ。なんでこいつがキャーキャー言われんのかまじで理解できない。絶対顔だろ。



「いっつも、そうやっていつ兄は兄貴の肩持つじゃん。

そういうとこマジで嫌いなんだけど」



ほらすぐ突っかかる。

反抗期なのは知ってるけど、さすがになんでもかんでもこうやって突っかかられるとこっちもイライラするわけで。



口を開こうとした俺の声を遮ったのは、南々瀬ちゃんの「夕陽」と呼ぶ声。

瑠璃をあやしている彼女は、なだめるように「そういう言い方しないの」と夕陽を軽く叱る。



「なんでナナにそういうこと言われなきゃいけないわけ?」



「本当に可愛げがないわね。

出会った頃は本当に素直だったのに」



……ああ、夕陽の言いたいことも確かにわかる。

冷たく突き放されるのにこうやって自分のことを理解してくれているのを知ったら、深みに嵌って抜け出せない。




俺も、そういう相手を知ってるからよくわかる。

突き放すなら、完全に突き放してくれれば良いのに。……中途半端なのが、一番引きずる。



「夕陽がそういう言い方するから、相手も突っかかってくるんでしょう。

いい顔しろとは言わないけど、相手に甘えないの」



瑠璃が椛に手を伸ばしたのを見て、彼女は瑠璃を下ろす。

それから空いた手を夕陽の頭に伸ばして撫でたけど、夕陽はきゅっとくちびるを結んだままで。



「……もともと素直なんだから」



「……うるさい」



そう言って反抗的な態度は見せたけど、それ以上俺らに突っかかるわけでもなければ、大人しく引き下がった。

……さすがに。好きな子にそう言われたら、いくら夕陽でもわがままは言えないらしい。



そのまま八王子の双子の元に歩み寄って会話をはじめた南々瀬ちゃんのことを、夕陽はじっと見つめる。

何か言いたげで物憂げな視線は、見れば誰でもわかるくらいの愛しさだけを孕んでいて。