彼の口から、こぼれた言葉。
それを耳にしてようやく、じわじわと事態に自分自身が馴染んでいく。
「夕陽……?」
「……え?
なに、南々瀬ちゃん、コイツと知り合いだったの?」
信じられないって顔で、夕帆先輩はわたしを見つめてくるけれど。
夕帆先輩の弟、よね? 夕帆先輩の名字、って。
「っ、は……!? ざっけんな……!
お前なんで日本にいんの!? 留学は!?」
ばっと。
ようやく我に返ったらしい彼が、勢いよく夕帆先輩の手を払う。それから鋭い視線を向けられて、慌てて6月に帰国したことを伝える。
なんか……お互いに戸惑ってる。
「……え、っと。
夕陽と南々瀬ちゃんは知り合いなのよね?」
「そーだよ!」
「どういう知り合いなの、あんたたち」
「ナナは……、
ああもうめんどくせえな……俺の元カノだよ」
シーン、と。
一瞬にして、広間の中が静まり返る。え?と、椛がただ純粋にこぼした声の隣で、呉羽くんは「あーあ……」とつぶやいていた。
「……は?」
「だから、元カノだって」



