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「おひさしぶりです、南々先輩。
……って、直接話すのははじめてですね」
はじめまして、と。
目を細めて微笑む美少年。写真で見た以上の美しさを発揮する彼は、「麻生 呉羽(あそう くれは)です」と名乗ったのだけれど。
……ん? 麻生?
「あ〜、呉ちゃん……まあいいや。
訳あって、うちは兄弟で名字違うんだよ〜。俺は騎士だけど、呉と、あと双子は麻生なんだよねえ」
「あ、ごめんね兄ちゃん」
「いいよ、どうせいずれはわかる話だし〜」
呉羽くんの兄ちゃん呼びがかわいい。
そして椛が抱き上げてる女の子と、呉羽くんと手をつないでる男の子。双子の瑠璃ちゃんと翡翠くんが、本当にかわいい。かわいすぎて誘拐とかされないだろうかと不安になるぐらいだ。
「瑠璃? ……ふ、恥ずかしいか。
人見知りなんだよねえ、瑠璃」
視線を合わせたら、恥ずかしそうに椛の胸元に顔をうずめてしまった瑠璃ちゃん。
ルノが「瑠璃」と名前を呼べば、彼女は顔を上げてルノへと手を伸ばした。
「……仲良いの?」
「ん〜、まあ仲は良いな。
瑠璃はルノに懐いてんだよねえ。……よしっと」
今度は翡翠くんを抱き上げた椛が、「姉さんまだ?」と首をかしげる。
それにつられて部屋を見回せば、大きな八王子家の広間には夕帆先輩以外の全員が各々くつろいでいるけれど。
着替えたいから、と言った彼はまだ来ていない。
家が遠いパターンなのかと思いきや、実は全員そんなに家が離れていないというまさかの展開。みんな家から通えば良いのに。
「ごめん、遅くなった」



