「おっはよぅ、南々瀬!」
「おはよう、テンション高いわね」
翌朝、みさとは白桃色のリュックサックを背負ったままわたしの元へとやってきた。
どうやら自分の教室に寄らずにここへ来たみたいだ。
「大和も、おはよー」
「おはよ。
みさとにしては、来んのはやいじゃん」
「だって南々瀬にはやく会いたかったんだもん」
ぷくっと頬をふくらませ、「ぎゅー」と抱きついてくるみさと。かわいい。
クラスの男子が数人、みさとのかわいさに悶えているけれど。女の子なら嫉妬してしまいそうなくらいに、みさとはかわいい。
「だろーな。んで?
南々瀬、昨日は呼び出されてどうだったんだよ」
「ああ、それがね、」
みさとが来る直前にも、大和とその話をしようとしてたんだった、と思い出す。
まだ腕の中にいる甘い赤茶髪を撫でながら「実は、」と話をしようとしたら。
「きゃあああああああっ……!!」
教室の外から、いきなり多数の黄色い悲鳴。
……え?ドア閉まってるんだけど?ここってたしか防音だったわよね?だから教室のドアにベルついてるのよね?
なのにどうして、廊下の声が聞こえてくるのか。
その答えはとても簡単なこと。
ガラッと開いた、わたしのすぐ隣の扉。
その瞬間廊下の声が伝染したみたいに、教室内が黄色い悲鳴で溢れた。