わたしに報告するために、持ってきたらしいそれ。
普通のよりも長さのある長方形の封筒には、『葛城みさと様』と彼女の名前が書かれているだけで、特に何もおかしくはない。
「……開けて良いの?」
「うん」
一度開封されていたそれを開けると、中にはメッセージカードとチケットが2枚。
チケットは、アイドルグループが夏休み中に行うコンサートのチケットだ。しかもアリーナ席の。そして、メッセージカードには。
「……いい加減連絡してあげたら?」
11桁の番号と、『赤沢 夕陽(あかさわ ゆうひ)』の文字が並んでいる。
080ではじまるそれは、ケータイの番号。
要するにここに連絡をくれ、という意味で入れたんだろう。
おそらく彼は、わたしがアメリカから帰ってきていることを知らないだろうし。
「……、考えとくわ。
この紙だけもらっていい? みさと」
「うん、どっちにしてもそれは南々瀬のために入れてあるんだろうしいいよ。
……それよりこれ、2枚入ってるから一緒に行こ?」
「……それは遠慮しとく。
大和と一緒に行くか、ほかの子あたって」
そう言えばみさとは頰をふくらませながらも、「わかったよぉ」とうなずいた。
それからまわりを見て、「あっそろそろ行くね!」とあわてて思い出したように出ていく。
ひらひらと手を振って見送ったら、わたしの肩にルアが顎を乗せた。
いつの間にか女の子たちも帰っていったみたいだ。ドームの中はシンとしているし、みんなはわたしがみさととの立ち話を終えるまで待っててくれたらしい。
「だれかに、ナンパ、されたの?」
わたしが連絡先を渡されるのを見ていたルアに、そう言われたけど。
ううんと首を横に振って、受け取った連絡先はポケットに入れた。



