「南々瀬……!」
なんの用事だろうかと黙り込んで考えていたら、まわりの熱視線を物ともせず駆け寄ってくる女の子がひとり。
ルアがするりとわたしから離れたから、席を立って抱きついてきた彼女を受け止める。
「相変わらず熱烈ね、みさと」
「えへへっ。
普通科のみんなよろこんでたよ〜!南々瀬のおかげで150点も入ったって!」
「……わたし何もしてないんだけどね」
ただテストを受けただけだ。
まあみんなが喜んでくれたなら何よりだけど、わたしをまだロイヤル部のみんなに近づく女として冷たい目で見てくる女の子は多い。
今も遠巻きに見ている女の子たちは、わたしのことを睨むように見てるし。
やっぱり全校生徒が集まるとなると疲れるな、と。甘い赤茶髪を撫でていたら、みさとは頰をゆるませた。
「あのね、南々瀬。
大和と……付き合うことになった、の」
「あら。よかったじゃない」
「南々瀬のおかげだよ〜っ。
ふたりでデートするって聞いて、わたしもうだめだと思ったもん」
うるうると瞳を潤ませる彼女はかわいい。
こんなに可愛い彼女がいて大和はしあわせだ。
「南々瀬に、はっきり"ごめん"って振られたって」
「……言わなくて良いって言ったのに」
はあ、と薄くため息をつく。
わたしが夏休み前、大和のデートという誘いに応じたのはこのためだ。わたしは本当に大和と付き合う意思がなかったし、みさととうまくいってほしかった。