「『ルノも、ルアも、とても優しいのよ。

だけど、その自分自身を否定するようなことをしないで。それはあなたを思って塞ぎ込んだルアにとって、すごく失礼よ』」



本気で思った。

この人がこの先も俺らのそばにいてくれる姫であれば良いのに、と。



「『ルノもルアも、間違ったことはしてない。

まだ出会って間もないわたしが言えたことじゃないかもしれないけど、紛れもなくわたしが保証する』」



「……姫らしいねえ」



「……椛先輩。

俺……どうしようもないぐらい、南々先輩のこと信じたいと思ってるんです。たとえ南々先輩が、俺らに不利な相手だったとしても」



ただ夢を見ているだけかもしれない。

夢から覚めれば現実はどうしようもなくあっけなくて冷たいものなのかもしれない。



それでも、信じたかった。




「椛先輩。

……俺の考え方は、間違ってると思います?」



「……いいんじゃねえの。

それがお前の『感性』で出した、答えだろ」



そう言われて、口角が上がってしまう。

ついてきてくれますか?と尋ねたら、「ばーか」と椛先輩は不敵に笑って。



「言ったじゃねえの。

お前らの面倒は、俺が見てやるって」



「……ほんと、椛先輩は俺とルアに甘いですよね」



絶対に口には出さないけど。

これでも信頼してるんですよ、椛先輩。



「っていうかさ、るーちゃんこそ。

……なんでもないような顔してるけど。本当は、姫のことだいぶ前から好きだろ?」