……はい?
「一生懸命「僕」って言ってるけどさ〜。
るーちゃん元々の一人称、「俺」でしょうに」
「……なんか関係あります?それ」
「いつも姫の前では「俺」って言わないように頑張ってんのかわいいなあと思って見てるんだけど、」
やだもうこの人怖い。
椛先輩が俺のことを昔から気にかけてくれているのはもちろんわかっているけど、そこまで見られてるともはや恐怖心が勝つ。
数年来の信頼を返してください。
というか別に、南々先輩の前で一人称にこだわっているわけではない。
椛先輩とは知り合ってからも長いし、多少口調を崩したって構わないけど。
南々先輩とはまだ出会って1ヶ月ほどで、そんな相手からいきなり親しくされても困るだろうし。
……ルアは誰に対してもほとんどタメ語だし呼び捨てだから、いつも南々先輩にひっついて甘えてるけど。
なにげに懐くのが誰よりも早い。
そういえば顔を合わせたその日にはもう、仲良くなってなかったっけ?
「……ルアもだけどさ。
るーちゃんも割と卑屈なとこあるよねえ」
「……そうですか」
「そもそもルアなんか、お前と比べられるから色々言われるだけであって、何も成績悪いわけじゃねえじゃん。
実際、ロイヤル部に入れるだけの成績はあって、電子機器に関する腕は十分あるじゃねえの」
まあ確かに、ルアは別にまわりから言われるほど成績は悪くない。
実際この間のテストだって、1年の特進科で貼り出された順位には次席にルアの名前があった。だから断じて悪いわけじゃない。
「どっちかというと、ルノが多才なんだよねえ。
ったく。双子の成績比べてる暇あったら、自分たちの子どもの教育しっかりしろっての」



