──週末の、日曜日。
俺はなぜか椛先輩と街中にある待ち合わせスポットの噴水を、近くのカフェから眺めていた。なぜかって、南々先輩を尾行するためだ。
夏休みと言っていたものの、すこし予定が早まったらしい。
「デートいつすんの〜?」なんてうざ絡みした椛先輩に、南々先輩は疑うこともなく「日曜日」と答えていた。
そして南々先輩の仲良しの女友達である葛城先輩に詳細を知らないか尋ねてみたら、彼女はどうやらふたりがデートすることを知らなかったようで。
「やっぱり付き合うのかな……」なんて言いながら、のちになんとか南々先輩にその話を聞き出してくれたらしく。
13時に噴水広場で待ち合わせ、らしい。
……この情報が本当なのかもわからないし。
いつみ先輩にバレたら本当に怒られる。
椛先輩が怒られるのは別に構わないけど、俺のことまで巻き込まないでほしい。絶対、俺のこと都合のいい後輩だと思ってますよね。
「べつにいいよ〜。
どうせいっちゃんのことだから気づいてるって」
俺もそんな気はするけど。
いつみ先輩のことだから、椛先輩の性格を知った上で今日の俺らの行動を見て見ぬ振りをしてくれている気がする。
「っていうか、なんで俺なんですか」
「……るーちゃんさぁ」
「……なんですか」
カフェオレ片手に窓の外から視線を俺へとうつす椛先輩。
すごくどうでもいいけど、この人といると視線が痛くて仕方ない。
尾行だと言ってるだけあって一応おしゃれなハットでオレンジベージュの髪を目立たなくしているみたいだけど、意味がないぐらい目立つ。
かくいう俺も、「ほら変装して」と言われて渡された黒ぶちのだて眼鏡をしてるけど。……変装っていうか、ただのおしゃれですよねこれ。
絶対南々先輩気づくと思うんですけど。
「口調崩れると一人称「俺」になるよねえ」



