【完】こちら王宮学園ロイヤル部




なんてそんなこと、本人に聞けるわけがない。

聞いたところで、都合が悪ければはぐらかされて終わるだけだろう。謎は深まっていくばかりで、考えたって答えは出ない。



「ただいま」



椛先輩が作ってくれた昼食を終えていつものように紅茶を飲んでいたところで、いつみ先輩と南々先輩がもどってきた。

そのまま放課後一緒に過ごして帰るのかと思いきや、さっきの彼との「一緒に帰る」という約束を果たすために、わざわざ帰ってきたらしい。



「おかえりなさい。

……紅茶、南々先輩の分も用意しますね」



「あ、ごめんね。ありがとう」



ふわりと。綺麗に笑う彼女が。

その裏に別の表情を隠しているなんて、そんなこと考えたくない。目の前で南々先輩はまぎれもなく、俺に微笑んでくれているのに。



その表情を探るようなことなんて、したくない。




「……そういえば南々先輩。

C棟だけは屋上に入れるの、知ってました?」



「え、そうなの?」



「はい。息抜きしたいときにいいんですよ。

あとで一緒に行きませんか?」



誘えば、南々先輩はうなずいた。

それから「実は屋上に憧れがあったの」なんて、ごく普通の女の子と変わらない憧れを口にする。



「ほら、よくドラマとか映画で屋上って出てくるじゃない?

でも実際には立ち入れないことの方が多いし、」



「ああ、確かによくあるパターンですよね。

そういう青春に、色々と憧れてたりします?」



さりげなく。

定位置に座る彼女の前に紅茶の入ったカップを置いて、尋ねる。元カレ、が、いたなら、少なからず恋愛に無関心ではないんだろうけど。