もごもごと。

否定すればいくみさんは「まあ男女の友情もあるわよね」と微笑んで。それからいつみ先輩に抱きついていた。安定のブラコンだ。



「離れろ」



「やだー。お姉ちゃんに優しくしてよね」



「……チッ」



舌打ちするくらいなら、引き剥がせばいいのに。

そうしないあたり完全に嫌がってないんだと思う。いつみ先輩は大概いくみさんに甘い。



「それよりいくみ姉。

用事は夏休みにやる仕事持ってきただけ?」



優雅に紅茶を口に運びつつ、首をかしげる夕帆先輩。

今日もとてつもなく美人だ。彼は間違いなく生まれてくる性別を間違えてきたと思う。




「ん?んー……ほんとは他にもあったんだけど。

やっぱりいいわ。別に急ぎの用事でもないし」



彼女はそう言って、いつみ先輩から離れると「じゃあね」とすぐさまリビングを出ていく。

彼女の出て行ったリビングの扉を、しばらくぼんやりと見つめていたら、「南々瀬」と名前を呼ばれた。



「はい」



「……ちょっと外出るか」



「……はい?」



外? 外って、どこか行くってこと?

……わたしといつみ先輩が一緒に?



「飯。……話あるから、付き合えよ」