はっと。

思い出して椛にスマホを借りると、「この子どこかで見たことない?」と大和に彼の写真を見せる。そうすれば大和は、一瞬考えたあと。



「……お前覚えてねえの?」



「え、やっぱり知ってる?」



「知ってるもなにも……

お前の元カレの、ほら、仲良かった……」



そう言われて。

引っかかっていた何かが、ぴたりと当てはまる。「あ!」と思わず大きな声を出したわたしに、大和は迷惑そうに顔をしかめた。



「そうだ……」



わたしが昔付き合っていた人と、仲の良かった男の子だ。

直接話したことはないけれど、何度か見かけたことがある。だから覚えてたのか。




「……元カレ?」



ふと届いたのはいつみ先輩の声。

振り返って、「その友だちの子でした」とようやく発見した記憶に満足して、椛にスマホを返す。そしたら、なぜかなんとも言えない顔をされてしまった。



「……彼氏いたの? 姫」



「あ、うん。中学卒業するまでの半年だけね」



「……へえ」



いまはもう連絡も取ってないし、会ってもないけど。

彼のともだちが椛の弟だったのか。世間って狭い。



「あ、そろそろ昼休み終わるんで俺もどります。

……南々瀬、お前この間の約束忘れてねえよな?」