「……椛も大概天然たらしだけど、

それを上回る天然たらし相手だとこうなるのね」



「椛先輩は半分自覚のあるたらしですけどね」



「それにしても強烈ね。一撃よ一撃」



ようやく笑い終えた夕帆先輩とルノが、何かふたりで話しているけれど。

ついていけなくて「大丈夫?」と彼に合わせてしゃがみこめば、椛は手で顔を隠したままこくんとうなずいただけ。それからしばらく黙って、ようやく椛は顔をあげた。



「あ〜、やば……

そうそう、写真見せる約束してたんだったな」



「あ、うん。そうだったわね」



なんだかわざとらしく話を逸らされた気がしなくもないけど。

それよりも言ってた写真が気になって、椛のスマホを一緒に覗き込む。




……そういえばさっき流したけど、椛って教養科の生徒なの?

わたしが勝手に特進科だと思ってただけで、実はそうじゃなかったらしい。



「これが双子の弟と妹だよ〜。

女の子の方が瑠璃(るり)で、男の子の方は翡翠(ひすい)」



「かわいい……!

でも椛とはあんまり似てないのね。椛、ご両親のどっちに似てるの?」



「あ〜、うん。まあねえ……

俺は母親似だって言われるけど……、さあ?」



なん、か。返事のキレが悪い。

もしかして余計なこと言っちゃったかな、と。一瞬漂った不穏な空気を悟って口を閉じると、椛が次に見せてくれたのは中3の弟の写真。



「呉羽(くれは)って言うんだけど〜」



イケメン、というよりも美少年という言葉が似合う、綺麗な顔をした男の子。

脳内で椛の黒髪姿を想像してみたけれどやっぱり似てなくて、呉羽くんの方は、さっき見せてもらった双子とよく似ていた。