「女の子に真顔で「プレイボーイ」とか言われたら俺もさすがに恥ずいからやめてよ、姫」



「……だってそうでしょう?」



はじめて会った時からスキンシップ過剰だったし。

わたしは寮生活ではないから、放課後より後のこの学校内のことは知らないけれど。椛が遊び人、という噂は、ちらほら耳にしていた。



「遊んでもらいたいけど学校の子はむりなんだって、って、女の子が話してるの聞いたことあるけど。

もしかして人妻専門なの?椛」



「ちょ、ちょっとまってまじで」



問いかけるわたしの口を、手で塞ぐ椛。

必然的になにも言えなくてジッと彼を見上げたら、椛は「勘弁して……」と細い声で告げる。



その顔が意外にもほんのりと赤いから、どうやらこうやって詳細を聞かれるのは苦手らしい。

うしろでなぜか大爆笑している夕帆先輩を恨めしそうに睨んだ椛は、落ち着こうとしているのか一度小さな深呼吸をして。




「べつに……人妻好きとかそういうことじゃないから。

まあ、遊んでないとは、言えねえけど」



「………」



「や、うん……

たしかに遊び相手に人妻が多かったのも本当だけど、いまはもう、あんまり遊んでないし、ね?」



あんまり、ということは、まったく遊んでいない、わけではないらしい。

まあそこには男子高校生の複雑な事情があるだろうから、仕方ないとして。



「……別に女の人と遊ぶのは自由だけど、」



ようやく口を解放してもらえたから、どことなくいつもの余裕が見られない椛を見上げながら。

「何かあったら心配だからほどほどにしてよ?」と、思ったことを伝えてみれば。



「うわ……」と意味のわからない反応をした椛は、顔を手で覆って、そのまましゃがみこんでしまった。

……一体どういう状況なんだ、これ。