一人暮らしなのもそういう理由だと言えばいつみ先輩がなにやら難しい顔をしているから、「どうかしましたか?」と聞き返してみるけれど。

「いや、」と彼は否定して、それ以上はなにも言わなかった。



その姿がどうも気になったけれど、否定された以上深く聞くことでもない。

パソコンのテスト結果を何気なく「2年普通科」から、「2年特進科」に切り替えれば一番目にあるのは莉央の名前で。



「……あれ? 椛は?」



さっきまであったはずの椛の名前が、トップ10の中に入っていない。

ん?と後ろから顔を覗かせた椛は、「ああ、」とつぶやいてマウスを、わたしの右手ごと包んだかと思うと。



「俺はこっち」



カチ、と。椛がカーソルを「2年教養科」にあわせてクリックする。

っていうか近い。わたしがマウスに手を置いていたからそれごと操作したのはまだわかるけど。



さっきまで頭に腕を乗せられていたせいで、わたしの背中に彼の胸元がしっかり密着してしまっている。しかも椛の顎が肩に乗っている状態だし。

……なにこれ。恥ずかしいんですけど。




「どさくさに紛れて密着するのって……

どう考えてもセクハラですよね、夕さん」



「そうね、顔が良いから許されると思ってたら大間違いよ。南々瀬ちゃん気をつけてね。

そのセクハラ常習犯、人妻好きだから」



この密着がセクハラなのかはさておき。

人妻好き? 人妻好きって言った?



「余計なこと言うんじゃねえよ。

……姫、いまのはな〜んも気にしなくて良いから」



な?と。

とても素敵なスマイルをくれるのだけれど。



「……前から思ってたんだけど。

椛って、本当はプレイボーイよね?」



以前から気になっていたことを直接聞いてみれば、「なっ」と小さく声を上げる椛。

うしろで「どストレートに聞いたな……」と莉央がつぶやいていた。