「……そういえば、いつみ先輩」
「……なんだ?」
「あの女の子たち、どうなったんですか?」
わたしを今朝、攫った女の子たち。
結果として何かあったわけじゃないけれど、椛はいつみ先輩が相当怒ってるって言ってたし。大変なことになっていたらどうしよう、と思ったけれど。
「ああ、別に大したことはない。
……が、明日から生活しづらいのは事実だろうな」
生活しづらい……?
どういうこと?と。唯一先輩と一緒に女の子たちの元へ行った椛に話を聞こうと思ったら、こういう時に限って彼はキッチンから出てきてくれない。
視線をさまよわせた先でわたしの頭に浮かんだはてなマークに気付いたらしい夕帆先輩が、くすっと笑う。
その姿は何度見たって完璧に女性だ。詐欺すぎる。
「"ロイヤル部の姫を誘拐したことで、王様を怒らせた教養科の生徒"って。
明日全校生徒に知れ渡るってことよ。教養科にはペナルティでマイナス30点。当然、教養科の生徒からは冷たい目で見られるでしょうね」
「知れ渡るって……、
ん?ペナルティってなんですか?」
ペナルティの意味はもちろんわかるけど。
マイナス30点って何だ。この学園のシステムが未だに全部わからない。最先端のハイテク技術を駆使してる学校なのは、ある程度理解したけど。
「4月に、ひとりあたり5点の持ち点を与えられるんですよ。
たとえば定期考査で総成績がいちばん良かった学科にはプラス100点、今回のように何か問題を起こせば学科の持ち点からマイナスされる、という方式です」
「……その点数は何に関係するの?」
「父親によれば、どうやら協調性を高める目的の点数らしいですよ。
体育祭の際に学科の点数を人数で割って、ひとりあたりの持ち点が一番多い学科がご褒美をかけてトーナメント制でクラスごとに勝負するんです。優勝した1クラスのみ、ご褒美がもらえる仕組みですね」
へえ、とルノの説明を聞いて納得する。
つまりはそのご褒美をかけて学科ごとに勝負するらしい。そんなに魅力的なご褒美なの?と、過去に体育祭に出ているだろう3人へと視線を向けてみれば。



