「ありがとうございます、南々先輩」
「……ううん。
わたしはただ、すれ違って欲しくなかっただけだから」
手を伸ばして、ルアの髪をよしよしと撫でる。
そうすればなんだかルノが不服そうだから手を伸ばして同じように撫でれば、彼はうれしそうに笑みを深めた。……うん、かわいい。
「うわぁ、るーちゃんデレデレ」
「椛先輩なにか言いましたか?」
「なーんも。
……それより姫。もう18時すぎてるけど、どうせいっちゃんに送ってもらうなら夕飯食べてく?」
えっもうそんな時間……!?と。
あわててスマホを確かめれば、椛の言った通り時刻は18時をすぎていた。
そして、不在着信が一件。
掛けてきたのは大和で、時刻は20分ほど前。お互いに話に夢中だったから、電話に気づかなかったみたいだ。
「そう、ね……そうしようかな。
ルアも、いっしょに食べるでしょう?」
「……うん。いっしょに、食べよ?」
ルアもいっしょにいるなら、と。
みんなでリビングに移動すると、椛は「すぐ用意するから」と言ってキッチンに入っていく。ルノも、「ルアどの紅茶がいい?」って楽しそうだし。
ふたりとも、大事な後輩と弟が出てきてくれて、うれしいらしい。
それをルアも感じ取ったようで、ルノと話しながらにこにこと笑っていた。
「いつみ先輩。
不在着信入ってたので、ちょっと電話してきます」
しあわせそうな双子プリンスの笑顔をずっと見ていたいけど、そういうわけにもいかず。
今日は静かに傍観に徹している莉央、夕帆先輩、いつみ先輩のうちすぐ隣の彼に声をかける。そうすればいつみ先輩は、「ああ」とうなずいた。