「ルア……、って、南々先輩?」



「え、ちょいちょい何してんの~?」



顔を覗かせたルノくんと、椛。

どうやらルノくんの面倒を見ていた莉央、椛と女の子たちの元へ行っていたいつみ先輩、さらには数時間いなかったはずの夕帆先輩まで顔を出して。



「……ふふっ」



ルアくんがたった今発した、『ルノに、あいたいな』という言葉を思い出して思わず笑う。

感じ取りやすいのはルアくんの方みたいだけど、ルノくんだってすくなからず感じ取ってる。



もしかすると、ただ、共鳴していることに気づいてないかもしれないだけで。

お互いを思い合っている感情が強いのなら、きっとそこに共鳴とかそんなの、必要ないのかもしれない。



わたしのそんな思考に気づいたらしいルアくんは、同じようにくすくすと笑って。

それからお互いにゆっくり離れると。




「ルノ」



彼の名前を、はじめて呼び捨てにする。

そうすれば一瞬彼はきょとんとして、それから「はい」と素直に返事した。



「ほら、言ってあげて。ルア」



グレーがかったブラウンの瞳と。

ブラウンがかったグレーの瞳。



ルノはルノで、ルアはルア。

勝手に第一第二と呼ばれようが、それはわたしにとっては代わりのない事実。──そして、みんなにとっても。



「ルノ……ごめん、ね。

それから……ほんとに、ありがとう」



ルノが、おどろいたように目を見張って。

それから、そろりと手を伸ばす。──その伸ばされた手を取ることに、ルアがためらうことはなかった。