今度呼ばれた彼は、濃い、臙脂のような赤髪。
切れ長の瞳は手元のスマホから、わたしへスッと向けられる。睨むような視線に、どことなく居心地が悪い。
「馬村 莉央(まむら りお)。2年の、会計」
それでも決して無視はしないその態度に、悪い人ではないのかな、と思う。
先も後も、わたしの勝手な印象でしかないけれど。
「そして、こっちが珠王(すおう)いつみ。
──この学校の、いわゆる王様よ」
女王先輩の言葉を借りるようにして、持ち上げた視線を彼に向ける。
未だに一言も発していない彼は、ただじっと、わたしを見つめているだけ。
わたしが彼を見たことで、必然的に絡んだ視線。
それを先に逸らしたのは彼の方で、正しくは逸らしたわけではなく、彼が動いた。
自分の座っているソファが、ギシリと軋んだ音を立てる。
わたしのすぐそばの背もたれに右手をついた彼は、左手でわたしの顎を掬うように持ち上げた。
「……やっと、掛かったな」
「、」
おそろしく整った顔と、圧巻のオーラ。
王様の名にふさわしいそれらを持ち合わせた黒髪の彼は、小さく落ち着きのある声を落とす。そして何の脈絡もなく、額に口づけを落とした。
……な、んなんだろう。
ロイヤル部の人たちって、スキンシップ過剰なの?
「姫川南々瀬」
甘く噛み砕かれて、侵食されて、自分の名前を呼ばれているとは思えないような錯覚を起こす。
近い距離に戸惑うけれど、それを素直に受け取っては負けな気がした。
「お前を今日から、ロイヤル部の部員とする」