「……そう、だね」
「ルノくんとルアくんが、笑ってくれたら。
きっと手を差し伸べた椛も、しあわせよ」
ふわりと笑って、触れ合うぬくもりにすこしだけ力を込める。
当然、わたしとルアくんにはお互いに共鳴する能力なんてものはないけれど。それでも包んだこの手から、何かが伝わればいいと思った。
「……ルノが、」
「……うん」
「ななせと、出会って。
共鳴する気持ちがいつも穏やかだったのは、ななせが、こんなふうにやさしいからなんだね」
ふわり。微笑んだルアくんの澄んだ瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
それがとても綺麗で。テーブル越しでは遠いからと彼の方へまわって、その細い身体を強く抱き締めた。
「ルノのことを救ってくれて、ありがとう」
「わたしは、なにもしてないわよ……」
「ううん。お互いに何も求めずにいられる、ただそばにいてくれるだけでいいと思える相手って、案外むずかしいんだよ。
だから……ありがとう、ななせ」
ルアくんの腕が背中にまわる。
ルノくんが涙を見せるほど傷ついていたと彼は言っていたけれど。ルアくんは涙を見せられないほどに傷ついていた。ずっと、心の奥深くで。
「……ルノに、あいたいな」
ぽつり。泣き止んでからもしばらく離れずにいたルアくんが、そうつぶやいた、タイミングで。
唐突にかちゃりと開いた、部屋の扉。
──そして。