ぼくたち双子が父親が理事長をつとめる王学に入るのはもう決定事項だった。

それを知る椛の、絶対的な声。ルノとぼくが何を言おうと、もうそれを変えるつもりはないんだと、わかるくらいに。



はっきりと告げられたそれは、まるで。



「……すみません、でした」



「……、なんでるーちゃんが謝るんだよ〜」



たやすく水面には顔を出せないほど深く、世界の音を遮断する深海に閉じ込められるような気分だ。

わずかだけれどルノの罪悪感が共鳴して、指先が震えた。



「だって……」



「だって、じゃねえよ。

決めたのは俺で、お前らがそんな顔する必要なんかどこにもない。どうせどこでもよかったんだから、お前らの面倒この先も見てやろうって、ただそれだけだっての」




泣きたくなるほど、

まっすぐでまぶしい言葉ばかりくれる。



「それに、かわいい弟とも約束したからねえ」



今度はしずかに、やわらかい声で。

紡がれたそれに、「やくそく……?」と首をかしげれば。椛は優しげに微笑んだだけだった。



「っつうわけで。

この先もかっこよくて頼りになる先輩についておいで」



「……かっこよくて、は、余計ですけどね」



「でも頼りになる、は、ほんとだろ?」



王学を受けると言った椛は、受験間際に髪を黒く染めた。

無事に合格して受験が終わってからも「卒業までだ」と学年主任に押し切られていた椛は、結局卒業式のときも、黒髪のままで。