途端に感情を押し込めたようなその声に、息苦しくなった。
罪悪感。……本当に、そんなものなの?
「じぶんのせいで、ぼくが、部屋から出てこなくなった。
だから、それに対する罪悪感なんだよ」
「………」
「心配って、すごくきれいなことばで……
すごく、偽善ぶったことばだとおもわない?」
偽善。そう言われてしまえば、一瞬にして踏み込もうとした勇気がしぼんでしまう。
わからなかったわけじゃない。心配だよって言葉はごく普通にたてまえのように使われていて、そこに本心がなくたって言える言葉だ。
「それでも……」
だけど。……だけど。
なにも知らないわたしだけど、ひとつだけ。
「ルノくんはほんとうに、心配してる」
知っていることがあった。
いつもルアくんのところまで料理を運んでくるのはルノくん。そして彼がそれを食べ終えた後に、部屋にあいたお皿を取りに行くのも当然ルノくん。
「椛が……
ルアくんの分の料理だけ、いつも多めに入れてるの知ってる?」
もし食べたくてもおかわりを取りに来れないから、って椛は言ってたけど、本当はそうじゃなかった。
あれは。……ルノくんのためのものだった。
「多めに入れておいて、ルノくんが、残った量を確認してるの。万が一にでも、ルアくんが栄養失調で倒れたりしないように。
……残った分は捨てたらもったいないからって、あえて自分のご飯は少なくしてもらってるルノくんが、いつも全部食べてる」
持って帰ってきたお皿の中身を確認した後、彼は手帳のようなものに何かを記入してる。
それはおそらくルアくんを心配してのことで。
ただの罪悪感だけで、
ルノくんがそんなことをするとは到底思えない。