「あ、じゃあ、わたしが用意するわね。

冷蔵庫開けてもいい?」



「うん、すきにあけていいよ」



そう許可をもらって、栞を挟んで本を置く。

ぱたぱたと駆けてキッチンにお邪魔すれば、シンプルで小さな冷蔵庫が一台。開けてみれば意外にも、中身はぎっしり詰まっていた。



その中で、わかりやすく目の前に置かれている透明なレジ袋。

それを手にとって引き返し、いつの間にか椅子に腰掛けていたルアくんに向かい合うようにして座る。袋の中にはゼリーと、スポーツドリンクが1本。



「あ、そうだ、ルアくんちゃんと水分とって」



ペットボトルを開封して渡すと、彼はお礼を言ってから口をつけた。

それを横目に袋からゼリーを取り出す。桃、オレンジ、ぶどう、ナタデココなんかも入ったミックス。4種類も買ってきたらしい。



どれがいい?と聞こうとして顔を上げたら、なぜかとても綺麗な微笑を浮かべたままわたしを見ているルアくん。

まさか見られていると思わなくて、ドキッと心臓が跳ねた。




「え、と……?」



「ううん。ななせは、どれがいい?」



「え、わたし?」



っていうか名前……は、みんなに聞いたりして知ってるか。

防犯カメラも確認してるってことは、わたしがここに出入りしていることももちろん知っているだろうし。



「……桃、すきそう」



見事に的中させられて、思わず「なんでわかったの?」と言ってしまった。

「なんとなく」って彼は笑っているけれど。



感情に、とても敏感なのかもしれない。

わずかな言動の変化にも、悟ってしまうくらい。